離婚ケリメリ
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真直ぐに背を伸ばして生きるその人が好きだった。あの頃の私はとても弱かったから、自分を忘れられるくらいに、心躍るような、物語が好きだった。
物語が、好きだった。
「久しぶりだな」
記憶よりも、落ち着いた(あるいは、疲れた?それとも私に会うことに辟易している?―――分かりもしないことを考える癖は変わらない、変わったのはそれが私だという開き直り)声に、巡る思考に反した僅かな相槌。ええ、本当に。応える私に、あの頃のような痛みはもう無い。彼が不思議そうにしているように、それは私自身にとっても奇妙なことのように思えた。同時に、彼が『不思議』だと感じていることも奇妙だった。釦をかけ違えているかのよう。いや、かけ違えた釦の収まりどころを、私たちはようやく悟り始めているのかもしれなかった。
「少し、疲れてる?」
私が、敢えて問うべきでないところに踏み込んだのは、その手ごたえがあったからだ。彼も私も、互いを「汚点」を知る者として分類している。そう思えた。気丈な彼が力を抜くきっかけになればいい。そう、少なくとも私は、彼と「みっともないところ」を共有している人間であることは間違いないのだ。彼が私の思うように甘えるとも思わないけれど、休憩所の在処は、何らかの目印にはなるはずだった。
進むにせよ、戻るにせよ。
「ああ、少し、な」
私の意図に気付いたかどうかは知らないけれど、果たして彼は、疲れを認めて苦笑した。恐らくそれは甘えではなく、利用にすぎない。割り切ることのできる彼も、そうであると読める私も、そうあるように年月を重ねてきた。そういう、ことだ。
私も彼も、ティーカップを手にとって、それ故に沈黙を当然とした。騎士団に所属する彼が私の素性に何を思っているのか、想像できないわけではない。「お前たちのせいだ」とは、さすがに云えはしないだろう。青かったあの頃とは違う。腹芸というのではなく、ただ、ここでそれを言い募ったところで、意味がないことを互いに知っている。
「お前はどうだ?」
「少し、ね」
だから、私たちはそうして会話の第一幕を終えた。
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以下設定
帝都の落ち着いたカフェで再会する2人。メリッサは傭兵団の会計で、ケリーは騎士団の幹部。
現年齢は30手前くらいか。離婚の原因は「メリッサが我慢しすぎ、ケリーはそれに我慢できなかった」 まあ若かったんです。
今のメリッサは当時のメリッサを「物語を享受するように人間を見ていた弊害である」と考えている。干渉することはケリーを変えるのではないか?と恐怖していたが、人間と人間が関わることに変化が伴わないと信じていたのは、ケリーを「物語」として捉えていた。そのため、自分への干渉をも恐れた。ケリーはメリッサにとって「物語」であったから、そちらからの干渉は受け入れられなかった。
今のメリッサは物語を読むようにケリーを読み、けれどケリーへの干渉も、ケリーからの変化も恐れない。
しかし、ケリーを望むわけではない。
身分違いを超えるほどのエネルギーは、もうない。(と、このときは思っている)
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